夕暮れ食堂競馬みち(競馬小説)
「よっしゃぁ~、ヒシイグアス差せぇ!ウインイクシード粘れ! ん!なんか変なのがきとる!やめろやめろ! あ~ウインイクシード3着になってもうた・・」 うなだれるこぎんちゃん。 「いやいやこぎんちゃん。確か4番も買ってませんでしたかね」 「えっ!?…
「とっしゃんのエアスピネルきたなぁ・・。 でも肝心のサンライズノヴァが飛んじゃどうしようもない。 それにしても内枠先行天国やったなぁ・・」 先週土日の東京のダートは明らかにその傾向が出ていた。 分かっちゃいるが前日予想を変えるなんて展示会の最…
こぎんちゃんの「筑後屋」はこの金土日と呉服の展示会。 ホテルの大きな宴会場を借りて大々的にやっていたのはずいぶん昔。 今は近くの公民館を借りてやってる。 それでもヤリ手のこぎんちゃん。 田んぼが目立つような田舎にも関わらず、3日間で1千万円近…
佐賀記念は二人そろって外したこぎんちゃんとがんちゃん。 今日も2人そろって夕ぐれ食堂に来た。 さっきまでこぎんちゃんの「筑後屋」で2人で打ち合わせ。 呉服問屋「角米株式会社」の経理課長であるがんちゃん。 もとはなかなかやり手の営業マン。 勢いと…
水曜日の夜の夕ぐれ食堂。 明日は佐賀記念。 近くに住むこぎんちゃんたちにとっては有馬記念みたいなもんだ。 奥さんから夕ぐれ食堂へ行くのは週末だけしか許してもらっていないこぎんちゃん。 来週に控えた呉服の展示会の案内状を配るといって出てきたみた…
3週連続の的中とはいかなかったこぎんちゃん。 今日は一人で夕ぐれ食堂。 がんちゃんは、関西の大学から帰省してきたひとり娘も交えて3人で一家団らん。 年末年始を一緒に過ごして関西に戻ってすぐに緊急事態宣言。 大学の授業もほぼオンライン化されると…
◎ヴェルトライゼンデが2着に入り2週連続的中となったこぎんちゃん。 がんちゃんは3着ラストドラフトを持ってなくてハズレ。 今日も夕ぐれ食堂にはこぎんちゃんとがんちゃん。 緊急事態宣言がでて早仕舞いするようになってもお客さんは結構入ってる。 弓子さ…
「タイムトゥヘヴン、頑張ってくれましたね」 単勝を買っていた弓子さん。 馬券は外したものの、懸命に走るキストゥヘヴンの子供をみて元気をもらたって。 天国の夕子さんに届いたかな。 「今日はしっかり飲んで食べてもらいますよぉ!」 こぎんちゃん、がん…
「あれからもう26年か・・」 こぎんちゃんがつぶやく。 今日もがんちゃんと一緒に夕ぐれ食堂。でもいつもと雰囲気が違うみたい。 「この日が来るといつも心がキュッとなる・・」 弓子さんがお銚子で二人のお猪口に酒をつぐ。 小さいころ神戸に住んでいた弓…
「負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じぬくこと・・・」 夕ぐれ食堂に懐かしい歌詞が流れる。 80から90年代のJポップ、たまにその時代の演歌もかかる。 弓子さんにとっては少し古いチョイスに思えるが、こぎんちゃんと同じ世代のお…
「石川はもっと乗り方あっただろうに・・」 テリトーリアルは下手に人気したのが良くなかったのか、いまいち主張のないレース運び。 ルメールだったら自分から流れを作りに行ってる、って息巻くこぎんちゃん。 いまさら言ってもあとの祭り。 「わたしはかす…
のれんをくぐると弓子さんの艶やかな声が耳に心地いい。 「いらっしゃい」 こぎんちゃんの土曜日の夜は、ここ「夕ぐれ食堂」だ。 カウンター5席、小あがりにテーブル席が2つのこじんまりとした食堂。 土曜の夜の仲間たちとの競馬談義。奥さんからこれだけ…
概要 とある商店街。 その一角にある居酒屋兼食堂「夕ぐれ食堂」を舞台に、競馬好きの呉服屋の旦那こぎんちゃんと仲間たちが週末の馬券で織り成す悲喜こもごも。 登場人物 こぎんちゃん 呉服屋「筑後屋」店主。40なかば。呉服問屋「角米株式会社」の営業マン…