夕ぐれ食堂競馬みち

馬券だけじゃない競馬の楽しみを共有したい。競馬コラム、重賞予想をもとにした競馬ドキュメント小説「夕ぐれ食堂競馬みち」、オススメ競馬本など。

第1話 2021中山金杯 新年一発目は景気よく

のれんをくぐると弓子さんの艶やかな声が耳に心地いい。

「いらっしゃい」

 

こぎんちゃんの土曜日の夜は、ここ「夕ぐれ食堂」だ。

カウンター5席、小あがりにテーブル席が2つのこじんまりとした食堂。

 

土曜の夜の仲間たちとの競馬談義。奥さんからこれだけは許してもらってるみたい。

本郷商店街の一角にある「呉服の筑後屋」の3代目。

といっても、もとは筑後屋に出入りしていた呉服問屋「角米(カクヨネ)株式会社」の営業マン。

先代に気に入られ養子に入った。

 

小金丸(こがねまる)という苗字の前2つをとって「こぎんちゃん」。

「こきんちゃん」じゃ言いにくかったよう。

 

こぎんちゃん、指定席の奥から2番目の席に腰掛ける。

「う~さみぃさみぃ。がんちゃんはまだ?」

 

「今日は特に寒いよねぇ、吉井さんはまだよ」

弓子さんは目鼻立ちが整い、唇の右下にある小さなほくろがなんとも言えず色っぽい。

 

言ってるそばから戸を開ける音。

「いらっしゃい」

 

がんちゃん、少し笑って小さく会釈だけ。

吉井元数、もとかず。元の字から、がんちゃん。

こぎんちゃんの呉服問屋時代の同僚。今もカクヨネに勤めて、経理課長をやってる。

 

「おーきたきた。はやくはやく、こっち。弓子さん、熱燗お願い。」

 

弓子さん、お通しを用意する手をとめて、前掛けで手を拭いた。

「その前に。こぎんちゃん、吉井さん、あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします、でしょ?」

両手を前に重ね、丁寧なお辞儀。

こぎんちゃん、バツが悪そうに「そかそか。あけましておめでとう。今年も週末お邪魔します」

 

がんちゃんの指定席はこぎんちゃんの左隣。

一番奥は、山口利光「とっしゃん」の指定席。

とっしゃんは、カクヨネの先輩。2人にとっては新入社員時代からの師匠。

今は営業部長だって。

 

いつもは3人そろって日曜日の重賞予想。

とっしゃん、今日は野暮用あって参加できないって連絡があったみたい。

 

がんちゃんとの間に競馬新聞を広げるこぎんちゃん。

「京都金杯は、今年は中京。過去の傾向もくそもあったもんじゃない。
それにユタカのシェリで堅そうで面白くない。中山の方にしよう。
俺のデンデンはテリトーリアル、中山は今週からCコース。内枠先行有利で、去年は3着、これが軸だよなぁ・・・」

3人は本命の◎印を”デンデン”と呼んでる。

 

がんちゃん、いつものように手元にメモ紙だしてきた。

買い目がびっしり書かれてる。

「わたしは⑥カデナがいいかなと思って、脚質的には差しで不利かもしれないけど、実力はここでは一枚上手じゃないかなと思って。
あとは福島記念組が気になって・・・⑭ヴァンケドミンゴと⑰バイオスパークあたり・・まあ1着のほうのヴァンケかなぁ・・」

がんちゃん、いつものように2頭軸マルチの3連単で多点買いみたい。

 

「確かに福島重賞とリンクするんだよなぁ、中山金杯は。
でも7、8枠だろ、過去の傾向みても外枠は厳しいよ。その点テリトーリアルは福島記念3着だし条件そろってる。
不安は鞍上の石川?こいつあんまり知らないんだけど、そこは目をつぶって。
馬券は②テリトーリアルから、内枠先行中心ということで③ココロノトウダイ、⑤ショウナンバルディ、⑨ヒシイグアス、⑩アールスター、⑪ディープボンド。穴で⑬シークレットランに、最後はがんちゃん推薦の⑥カデナまでいってみる」

 

「二人とも、今年最初の競馬なんでしょ、当たるといいですね・・」

弓子さんの応援も受けて、新年1発目。幸先のいい船出となることを祈るばかり。

 

【こぎんちゃん馬券】

馬連②-③⑤⑥⑨⑩⑪⑬ 7,000円(1,000円×7点)

【がんちゃん馬券】

3連単2頭軸マルチ ⑥⑭-②③⑤⑨⑩⑪⑬⑮⑯⑰ 6,000円(100円×60点)

 

結果

1着⑨ヒシイグアス

2着③ココロノトウダイ

3着⑯ウインイクシード

【こぎんちゃん馬券】ハズレ

馬連②-③⑤⑥⑨⑩⑪⑬ 7,000円(1,000円×7点)

【がんちゃん馬券】ハズレ

3連単2頭軸マルチ ⑥⑭-②③⑤⑨⑩⑪⑬⑮⑯⑰ 6,000円(100円×60点)

 

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