1着3枠4番 ディープインパクト(武豊1番人気)
2着1枠1番 ポップロック(O.ペリエ6番人気)
3着4枠5番 ダイワメジャー(安藤勝己2番人気)
有馬記念はディープインパクトの圧勝で幕を閉じました。
これまでも衝撃的なレースを見せ続けてきた同馬ですが、この有馬記念が一番
安定した走りだったように思います。
出遅れたり掛かったりと、危うさを見せながらも絶対的能力で勝ってきたこれまで
のレースとは一線を画するものだったと思います。
「やんちゃ坊主」の走りではなく、「王者」の走りでした。
私にとってこの馬は不思議な馬でした。
普通、勝ちまくる馬というのはあまり人気が出ないものです。
シンボリルドルフしかりテイエムオペラオーしかり。
では何が違ったのか?
武騎手はディープについてこう語りました。
「ディープは走りたくてたまらない」
「走ることが好きな馬なんです」
ディープインパクトによって、あまり競馬に詳しくない人や嫌いな人がサラブレッドに抱く「走らされている」という印象が変わっていきました。
「走るのが好きな馬」
競馬につきまとう悲壮感を全く感じさせない、その純真無垢さ、前向きさに人は惹かれたのではないでしょうか。
しかし、ディープを機に競馬を知り、興味を抱いた人たちが5年後も(極端な話1年後すら)同じく競馬ファンでいてくれるでしょうか。
この2年間で「ディープファン」は「競馬ファン」になってくれたのか。
競馬の発展を止まない私にとっては、この点がとても気になります。
私が初めて競馬に触れたのは、ライスシャワーが予後不良となった宝塚記念でした。
馬券が当たった喜びや美しいサラブレッドの姿よりも衝撃的な、競馬の悲しい側面をいきなり突き付けられたのです。
その後、売れ残ったサラブレッドや引退するサラブレッドの末路、牧場経営のシビアな現実などを調べていくにつれ、ますます心惹かれていったのでした。
そういう意味ではディープインパクトで競馬の魅力にとりつかれた人たちとは真逆の入り方です。
だからこそ、ずっと競馬を続けてくれるような競馬ファンになってくれたのか、一抹の不安を感じるのです。
ディープインパクトという1頭のサラブレッドが単純に好きなだけだった、という人が
沢山いるんじゃないかと危惧するわけです。
それじゃあ、あまりにももったいない。
アイドルホースの出現は競馬人気向上の一つの要素にしかすぎません。
「強い馬が走っている」だけではやがて人は離れていくかもしれません。
初夏の鮮やかな日差しと晩秋の夕焼け。
競馬は、そんな対照的な性質を帯びたとてつもなく懐の深い文化です。
人を虜にする奥深さや味わい深さがあります。
オグリキャップ以来のアイドルホースの出現を一過性の熱気で終わらせてはいけません。
ここを起点に競馬がより一層多くの人たちに楽しまれる文化に成長していくことを願ってやみません。
注)本記事は2006年12月に執筆したものを加筆修正したものです。