九州地方に大雨特別警報が出された。
こぎんちゃんの「筑後屋」や弓子さんの「夕ぐれ食堂」が入っているここ本郷商店街も激しい風への備えに奔走している。
高齢の店主が多い商店会にあって、40代のこぎんちゃんは『若手』と呼ばれる部類。
商店街のイベントや、今回のような災害時には自然とリーダーシップをとることになる。
商店街のめぼしいところには土嚢を積み、商店街のアーケードは応急的に対策を施した。
高い屋根に上っての作業はこぎんちゃんと、もう少しだけいる『若手』に任される。
そういった備えのお陰か、木曜日、金曜日、そして今日も夕方まで大きな被害もなくきている。
こぎんちゃんたちは臨時の災害対策本部として商店街の中ほどになる集会所にこの3日間詰めている。
弓子さん他の飲食店のみんなは、各々食事の世話で活躍している。
「みなさん、今日の夕食です」
そう言いながら弓子さんが、夕ぐれ食堂特製弁当を抱えて集会所にやってきた。
集会所に詰めた店主たちが口々にお礼を言いながら弁当を受け取っていく。
全員に行き渡ったのを見てこぎんちゃんが弓子さんに近づく。
「ありがとう。
しかしなかなか前線が去ってくれんなぁ。
まだしばらく様子を見とかんといかんな。
弓子さんも、大変やけどよろしく頼む!」
弁当を受け取りながらこぎんちゃんが弓子さんをねぎらう。
がんちゃん、野田君は「筑後屋」に出入りする卸問屋という手前、助っ人として木曜日に続き今日も集会所に詰めてる。
二人はもちろん『若手』の部類に入るので屋根の補修はじめ力仕事で大いに役立っていて商店街の店主たちからも感謝されている。
野田君とがんちゃんも弁当を受け取って、こぎんちゃんと3人で固まって食べる。
「大将、こんな時に不謹慎ですけど、明日の競馬、やるでしょ?」
さすがの野田君も空気を読んでか、ヒソヒソとこぎんちゃんに声かける。
こぎんちゃんも声を潜めて、
「当たり前や。飯食ったら裏の小部屋に集合やぞ。がんちゃんもええな」
そういうと急いで弁当をかき込み始めた。
しばらくして3人が裏の小部屋に集まり、野田君がさっそく競馬新聞を広げる。
「大将、明日はどっちにしますね?」
「地元九州開催、そして頭数も少なくて当てやすそうな小倉記念!と言いたいところやが、ここはあえて新潟の方、関屋記念にする。
なんせ、NHKマイルカップでお世話になった馬が出るからな。
絶好調だったあの頃をもう一度っちゅうことでデンデン(◎本命)は⑪ソングラインよ。」
「とっしゃんのご神託馬でしたね。珍しく1番人気からいきますか・・」とはがんちゃん。
「1番人気やから、この馬をNHKマイルで買わなかった人間は本命にしづらいわな。
でも、俺らは違う。お世話になっとるから買える。
これが流れっちゅうもんやから。
池添がわざわざこの馬のために北海道から移動してくる。しかも斤量51キロ。
勝負ががりもええとこやろ。」
「私も3連単2万馬券をプレゼントしてくれた馬ですからね。
これからいきます。相手は?」
がんちゃんがこぎんちゃんに投げかける。
「毎年このレースは外枠の馬が活躍するからな。
その線から、脚質的にもこのレースに合っている⑭クリスティ、さすがに人気を落としすぎな⑮ミラアイトーン、惨敗後の距離短縮&ヨコノリの⑰マイスタイルや。
そして、③シャドウディーヴァ、⑥ロータスランドよ。
野田はどうや?何かいい穴馬おらんかい?」
「私は⑤アトミックフォースが面白いと思いますね。
ここ数戦も大きく負け取らんでしょう。今回は相性のいい新潟になりますけん、ここらで穴をあけるかもしれんですばい・・」
「よーし。おもしろか。それも入れた馬連6点で勝負やな!」
馬券が決まった3人はそそくさと集会所に戻っていった。
風雨による災害が最小限で済みますように。
【こぎんちゃん馬券】
馬連⑪-③⑤⑥⑭⑮⑰ 4,200円(700円×6点)
【がんちゃん馬券】
3連単1頭軸マルチ ⑪-①③⑤⑥⑭ 6,000円(100円×60点)
結果
1着⑥ロータスランド
2着⑬カラテ
3着⑪ソングライン
【こぎんちゃん馬券】ハズレ
馬連⑪-③⑤⑥⑭⑮⑰ 4,200円(700円×6点)
【がんちゃん馬券】ハズレ
3連単1頭軸マルチ ⑪-①③⑤⑥⑭ 6,000円(100円×60点)