競馬本の紹介、第7回は清水成駿さんの「競馬無敵の孫子流21攻略」です。
清水成駿さんをご存じですか?
1948年東京都出身。明治学院大学卒業後、競馬専門紙「一馬」に入社。
予想欄にひとりポツンと打った「孤高の◎」で次々に大穴を的中。一躍カリスマ予想家に。
「一馬」退社後は2003年から東スポ「馬単三國志」を連載。
私はこの「馬単三國志」が大好きで、その為だけに土曜の夕方に大スポを買っていました。(私は関西在住なので東スポではなく大スポです)
残念ながら、2016年の夏、がんとの壮絶な戦いの末旅立たれました。
■比類なき予想家
清水成駿さんを一言であらわせ、といわれれば私はこう答えます。
ー 競馬予想を文学に昇華させた稀代の予想家
予想屋は馬券を当ててなんぼ。あてれば称賛され、はずせば非難される。
至極単純です。
競馬専門紙、スポーツ新聞の競馬欄。
さまざまな予想家がおられます。
タイム重視、血統重視、過去のレース傾向重視、勝負気配重視・・・。
予想家の方々は己のスタイルに従って、しっかり根拠を交えて予想を提示されます。
競馬ファンは、その根拠に確からしさを求め納得すれば参考にし、時には乗ったりします。
更に、今の時代はSNSの発展で”自称”予想家が巷にたくさんあふれています。
競馬予想もデジタル化が進み、あらゆる観点でのデータが手軽に取得できるようになっています。
調教をはじめ参考の映像も容易に入手可能ですので、誰もがいっぱしの”理論”を展開できる世の中です。
しかしそれは一方で、無味乾燥な、独自性のない横並びな予想にも見えます。
こんな時代だからこそ清水成駿のような予想家が恋しくなります。
競馬社会の狭い範囲で物事を語るのではなく、歴史、政治、経済、社会、文化・・・それらに関する高い教養と知見を背景に、圧倒的筆力と有無を言わせぬ強い存在感で読むものを納得させます。
その筆者が、紀元前500年ごろの中国、春秋戦国時代の呉に仕えた思想家・孫武が著した用兵論になぞらえて自身の予想エッセンスを綴った一冊です。
■走らせる側の論理
清水さんの一貫して不変のテーマ「走らせる側の立場に立って考えること」。
ジョッキーや乗り替わりに始まって、コメント、調教、ローテーション、どんな些細な変化も見逃さず、それらの情報をすべて頭に叩き込んだうえで、走らせる側の気持ちに立って推理する。
まさに孫子にいう「彼を知り、己を知らば百戦危殆(あや)うからず」です。
これを根底に、21の実際のレースと、筆者自身が展開した予想が掲載されています。
一部を抜粋します。
孫子流その1 ●2006年天皇賞(秋)-展開を読む
孫子流その4 ●2006年ジャパンカップ-社台の思惑
孫子流その5 ●2006年ステイヤーズS-開催替わりの打ち方
孫子流その7 ●2007年ガーネットS-2頭だしの正体とは
孫子流その18 ●2007年日本ダービー-ウォッカ◎の根拠
成駿語り下ろし 「馬を走らせる側」の論理とは
成駿語り下ろし トップジョッキーたちの裏事情
一つ一つのレースを独自の世界観で切り込む気持ちよさを是非味わってみてください。
清水成駿さんに触れていただくエントリーとしてはとてもよい本だと思います。
巷にあふれるデータを集めてきて連対率の高い条件を提示するだけの競馬予想ハウツー本とは違う、競馬の奥深さにも触れることができる良書です。
↓↓応援していただけると嬉しいです。